一緒にひなたぼっこ(トサカ丸×黒羽丸)


とある日の午後
緩やかに吹く風が髪を揺らし
穏やかな陽射しに微睡む―…



□一緒にひなたぼっこ□



(うわぁ…珍しいもん、見た)

静かに地面へと降り立ち、右手で口許を押さえて近付く。気配を抑え、そろそろと…幹に背を預けて眠る黒羽丸の側へ足を進め、トサカ丸はすぐ横に膝を付いた。

頬を撫でる風は柔らかく、あたたかい。
くぅくぅと寝息を立てる黒羽丸の髪がふわりと風に揺れ、小さく声が漏れた。

「…ん……」

降り注ぐ陽射しは頭上を覆う葉に遮られ、温かさだけを伝えてくる。

理知的な光を宿し真っ直ぐトサカ丸を見詰めてくる紅の瞳は、今は瞼の裏に隠され、あどけない顔が目の前に晒されていた。

(………可愛い)

惹かれる様に持ち上げた指先で黒羽丸の頬に触れる。起こさぬよう慎重に、しっとりとした柔らかな頬に指先を滑らせ無意識に頤に指をかけていた。

(黒羽……)

身を屈め、トサカ丸は吐息の触れる距離まで近付くと、そっと瞼を伏せる。
そして、ゆっくりと…黒羽丸の唇に唇で触れた。

「ん……」

(黒羽…)

「…ぅ…ん…」

どこかむずがるように溢された声にトサカ丸ははっと我に返る。

(――っ。あ…俺、今何して…)

トサカ丸は自分の口許を押さえ慌てて身を引いた。
ちらりと黒羽丸の様子を窺うが起きた様子はなくトサカ丸は詰めた息を吐く。

「何やってんだ俺…」

くしゃりと額に落ちる髪を掴み、くぅくぅと寝息を立てて眠る黒羽丸の横に倒れ込んだ。

「はぁ…。いくら黒羽が可愛くたってこれは駄目だよな」

仰向けに寝転がり、葉で遮られた空を見上げて呟く。

(次からは起きてる時にしよう。…それにしても今日はあったけぇな)

どこかずれた事を考えながらトサカ丸も黒羽丸の横で瞼を閉じた。

…あたたかな風が二人の頬を撫でる。
暫くして聞こえてきたトサカ丸の寝息に、眠っていた筈の黒羽丸の瞼が開く。

持ち上げられた右手の人差し指が、トサカ丸に触れられた唇に触れ、震える。

「馬鹿トサカ…」

キッと赤く染まった目元が、横で緩んだ顔で眠るトサカ丸を睨み付けた。

「起きないとでも思ったのかお前は」

まったく、と小声で落とされたぼやきはトサカ丸に届かずに消える。
その頬が陽射しのせいだけでなく赤く染まっていたのは黒羽丸だけの秘密だ。

「幸せそうな顔して眠りやがって」

自分は完全に目が覚めてしまったと、すやすやと眠るトサカ丸の額を黒羽丸は軽く小突いた。



end

御題配布元
≫immorality



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